musician's talk ウクレレを愛するミュージシャンへのインタビュー
gray-dot
Vol.1 突然プロのベーシストへ

sekiguchi


――勝さんのウクレレ原体験は?
「ウクレレといえば『大正テレビ寄席』のウクレレ漫談、牧伸二さんです。日曜日のお昼の番組だったと思いますが、毎回欠かさず観てゲラゲラ笑っていました。それは幼稚園とか小学校低学年くらいの頃ですけど、後になって『やんなっちゃった節』の原曲が『TA HU WA HU WAI』だと聞いて知ってビックリしたんです」

――音楽に目覚める前のことですか?
「僕は3歳からピアノを習っていたんです。お洒落な習い事のトップにピアノがあった時代なんです(笑)。ぜんぜん裕福じゃなかったですけど、両親はなぜかピアノ買ってくれて、習わせてくれたんです。自分からやりたいと思ったわけではないし、特別楽しかったわけでもないんですけど、五線譜を使ったり和音の仕組みを鍵盤で視覚的に認識できたので、今になってかなり役立っていますね。でもね、小学校に入学した頃にやめちゃったんです。当時『ひょっこりひょうたん島』が流行っていて、オンエアの時間が僕のピアノのレッスンの時間とかぶっていた。隣の部屋で従兄弟がテレビを観てゲラゲラ笑っているわけですよ。『もうやめるー!!』って(笑)。中学生になって、友達がピアノでビートルズの『Let It Be』を弾いているのを見て、また触るようになったんです。小さい頃ピアノを習っていたときは右手でメロディ、左手でベースと和音だったじゃないですか。でもビートルズは両手で伴奏なんですよ。メロディじゃなく、右手で和音、左手でベース、それに歌をつけるというスタイルに感激したんです。同時にビートルズを知って『これはすごい! カッコイイ!!』と、友達とバンドを組むわけですよ。当時ベースを弾く人はギターが下手な人かジャンケンで負けた人。だけど僕のヒーローはポール・マッカートニーだったんで、どうしてもベースがやりたかったんです。もうひとつ考えがあって、『ギターが下手な人たちばかりがベースを弾くんなら、ちょっと練習したら俺、ひとよりも上手くなれるんじゃないか?』って(笑)。そういうずるいことを考える子供だったんですね」

――笑
「ジャンケンに勝って、そこからベース人生ですよ」

――そのバンドでビートルズのコピーをやり、その後プロとしてデビューするまではどんな道のりを?
「高校時代にブルースバンドをやり始めたんです。当時はディープ・パープルとかツェッペリンとかが流行っていたんですけど、人と同じことをやるのが面白いと思えなかったんです。それで『ブルースバンドってちょっとひねくれていていいじゃん』とやり始めたんですけど、オリジナルを作り出したらぜんぜんブルースじゃなかったんです。ポップだったりバカバカロックだったりしてちょっと町の人気者になって、『俺たちイケるんじゃねぇ?』って勘違いが始まるんですよ。そんなこんなで大学時代にバイト先で『セブンティーン』を見ていたら“子供ばんど・ベーシスト一般公募”と書いてあったんで、応募したらトントン拍子で合格して、そのままニューヨークに連れていかれてレコーディングしたんです。プロデューサーはリック・デリンジャーだし、もうビックリの連続ですよ。昨日まで音楽雑誌のベーシストのインタビューを読んで『へぇ、弦はステージのたびに取り替えるのかぁ』なんて言っていたのが、急に立場が逆になっちゃって『何を使ってるんですか?』なんて聞かれちゃって、えーっ???って感じでしたね。よくわからないままツアーが始まって……面白かったですね。自分たちで機材を詰め込んで運転して、いろんな町のライヴハウスに行きました。年間300本くらいライヴをしてましたから」


――ほぼ毎日ライヴだったんですね。
「アマチュアバンドのときには感じられなかったグルーヴを体感する毎日で、僕にとっては刺激的でした。同じ曲を毎日演奏するのに、ちっとも飽きないんです。毎日早くそこに浸りたくてしようがないんです。そのときにいわゆるグルーヴというものが沁みついたと思います」

――なぜアマチュア時代にはグルーヴを感じられなかったんでしょうね? プロとアマの一番の違いは何なんでしょう?
「たぶんアマチュアの頃は各メンバーの中に流れているリズムにズレがあったんですよ。“息が合う”ってよく言いますけど、息を吸うタイミングと吐くタイミングが一緒だと絶対に演奏が合うんですよ。そのタイミングが合わない人とは技巧的に合わせることはできても、ナチュラルな合い方ではないからサウンドがグルーヴしてこないんだと思います。グルーヴが生まれないと同じ曲を演奏しているうちに飽きてきちゃうんです。ところが子供ばんどに入って演奏すると、やる度に気持ちいい。『プロってすごい!!!』って感激しているのに、自分もプロになったんだからそんなことは言えない(笑)」

――子供ばんどのライヴの盛り上がりにはすごいものがありましたよね。
「お客さんもすごい勢いで、たまに怖かったです(笑)」



勝さんのスタジオに置いてある楽器の一部。ウクレレは左からKALAウクレレベース、Gストリング・テナー・カスタム、松井ウクレレ・コンサート、オイハタ・ソラリス・5弦テナー、Gストリング・コンサート・カスタム、カマカ・ソプラノHF-1DX、Gストリング・テナー・カスタム。





















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